『東京新聞』2013年7月22日夕刊「大波小波」は〈「あまちゃん」の3・11〉と題し「中森には、『あまちゃん』が岩手県、『八重の桜』が会津と、原発震災の中心地を微妙に外して東北の復興を支援するNHKへの懐疑がなさすぎる。アイドルが要になった明るい地域一丸が、今も続く原発震災の破局の広がりを見えなくしてしまう「絶望」だって、ありうるのではないか」という。(じぇ)と署名する大波小波子は、特集ドラマ『ラジオ』を意図的に無視しているのだろうか?

中森明夫氏は「戦後日本最大の国難に対峙たいじするのがアイドルなのだ」「希望は、能年玲奈!」と、『小説トリッパー』2013年夏号〈午前32時の能年玲奈〉でNHK連続テレビ小説『あまちゃん』に主演する能年玲奈を中心にアイドルを論じた。くだんの大波小波はこれを「楽観的『あまちゃん』論」として「批判」したものであると中森氏は捉えた

2013年のNHKドラマで東北に題材を採ったものには『あまちゃん』(2008年以降の岩手、連続テレビ小説)『八重の桜』(幕末の会津、大河ドラマ)のほか『火怨・北の英雄 アテルイ伝』(平安初期の岩手、BS時代劇=全3回/土曜ドラマ=全2回)、『ラジオ』(2012年の宮城県女川町、特集ドラマ=単発)がある。『アテルイ伝』以外はアイドルドラマとして見ることも可能だ。だから大波小波子は『八重の桜』を持ち出してきたのだろう。しかし『ラジオ』には触れない。

『アテルイ伝』には3・11後のパートがあり、そこに登場する被災した高齢の女性がアテルイについて語るという体裁でドラマが進む。『あまちゃん』は3・11を描くが、大波小波子があげつらった時点では劇中時間はその時に至っていない。劇中世界は8月末から9月初めにかけて2011年3月11日を迎えるようだ。「東北が舞台になった時点でやらないのはウソだし、それだけをやるのもウソだなと思っていた」(『AERA』2013年7月22日号)宮城県出身の宮藤官九郎氏は「震災について描いていたときも、震災を経験した東北の人たちが、果たしてそれをもう一度ドラマで見たいのか? って悩」んだ(『NHKドラマ・ガイド あまちゃん Part2』)という。9月2日からの第23週のサブタイトルは「おら、みんなに会いでえ!」だそうだ。

この時点で3・11後を主として扱ったのは『ラジオ』だけだ。『ラジオ』は実在する「女川さいがいFM」を主な舞台に、「被災地」となってしまった女川の人々の視点で3・11後のもろもろを、外部の無責任な目線(在京マスコミ・反〝がれき〟デモ)や当事者とのずれ・温度差を含めて、すがすがしいほど真正面から描いた。

確かにドラマでも宮城県や福島県浜通りをもっと取り上げろ、という気持ちはないではない。しかしNHKはほかにもさまざまな形で被災した各地を取り上げている。3・11に関わる報道姿勢も大筋で評価すべきものであり、私は3・11以降NHKを見直した。

一方『東京新聞』がやらかしたことといえば、例えば、被災地に「がれき」で困っている人はいないなどとぶち上げたり、広域処理受け入れ反対派の「悪意のある一文」を拡散しない「配慮」を求めたりといったことだった。『東京新聞』に対する私の評価は3・11以降下がるばかりで、もはやこれ以上落ちようがないというところまで落ちた。最初、くだんの「大波小波」を読んで、(じぇ)氏はNHKも東北に絶望を振りまくことを望んでいるのかと思ってしまった。

『東京新聞』を発行する中日新聞社は2012年12月「福島特別支局」なるものを設置したが、福島・宮城・岩手の被災3県では新聞を発行していない。NHKは3県に取材拠点があり、もちろん放送もしている。この差は大きいと思わざるを得ない。

特集ドラマ『ラジオ』は、中森氏の〈午前32時の能年玲奈〉が「『告白』組の少女たち」と呼ぶうちのひとり刈谷友衣子の主演作品でもある。今後、深い意味のある作品になるだろうと私には思える。初回放送が、サッカーワールドカップ・アジア最終予選ヨルダン戦を控えた3月26日22時からであり、この作品は出来に見合った認知度を得ていないのかもしれない。物議を醸すかもしれないが、過去に埋もれてしまうのはもったいない。極論すると、もうひとつの『あまちゃん』でもある。中森氏が特集ドラマ『ラジオ』を論じていたらぜひとも読みたい。

思い違い

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Brevetを「ブル」と書く人がいるのは以前から気になっている。こういう人たちは実際に〈bu-ru-Pe〉と発音するのだろうか。ブルヴェが公式表記になっていれば、この手の誤記はいくらか減っていただろう。

その点イスタンブールはIstanbulだから、ウ濁(ヴァ行)を使って誤記を避ける方法はとれないけれど、音引き(ー)なしのイスタンブルが一般的な表記だったら、イスタンールという文字列は見掛けなかったかもしれない。

思い違い、うろ覚えは誰にもあるだろう。私は最近までWalter Ulbrichtのことをヴァルター・ウルリヒトだと思い込んでいた。私がこれまで読んだ本の中で、この人物について扱った本は1冊しかないが、その本がウルプリヒトと記していたのがその原因だ。よく見ると、くだんの本には少なくとも1カ所「ウルプリト」というさらなる誤植(脱字)がある。

主立った日本語の参考図書はUlbrichtをウルブリヒトと表記する。知る限りウルリヒトと書くものはない。私がこの人物について論じることはないだろう。仮に同姓の人物について述べることがあっても、くだんの本とは別の情報源を根拠にウルブリヒトという片仮名表記で認識するに違いない。このまま思い違いを続けていても恥をかくことはなかったと思う。ただ、今回これに気付いたことで、思い違いを固定しないためには、調べられる範囲で複数の情報源に当たる必要があるという当たり前の教訓を得ることになった。1冊の本、1人の著者、一つの情報源に頼り切りになることはやはり危なっかしい。

毎日ことば・ブログ: 似ているけど違う」の最後の一段落を読んで、『マックブロス』に載ったスティーブン・ハートウェル(Steven Hartwell)氏のインタビュー記事を思い出した。

Hartwell氏はクラシックMac OSのアジア言語スクリプト(「スクリプト」はMacで特定の文字体系〈script〉を処理するために必要となるシステムファイル)の開発に携わった元アップル社員で、諸言語スクリプトの開発を目指し独立した。アップル在籍中にアラビア語とヘブライ語のシステム、独立後にはチベット語・クメール語・ラオ語のスクリプトを開発した。

OUTLK.net: Otani University Tibetan Unicode Language Kitsによると、Hartwell氏は、大谷大学嘱託研究員として、Leopard以降のMac OS Xのチベット語サポートにも大きな役割を果たしたという(今回、思い出したことでこの後日談を見つけられて嬉しい)。どうやら最近の氏のプロフィルとおぼしきものもネット上で見つかる。

Hartwell氏は、前述のインタビューでこう語る。

私がアラビア語スクリプトを作ったのは、近くにそれを欲している人がいたことが大きかったのです。アメリカ人はラオ語をサポートしなくたって全然気にしない。載らなきゃローマナイズすればいい、という例の言語帝国主義ですから…。だからトヨタ財団や大谷大学、東洋文庫のように、データベース的な面での必要性をわかっていて、お金を出すのも惜しまないと言ってくれるところに費用を出していただいたわけです。印刷関係者は、まったくお金を出そうとしなかったですね。

IBM PCの方がきれいだよと言う方はそれはもうそれで結構ですが、このスクリプトを使うメリットは、単に見た目ではなく、ディスクに保存されるデータコードがシステムによってサポートされる一貫したものであるということです。フォントだけを作って英語システムに載せているものは、同じ文字でもディスプレイ上で形が変わるとデータコードも変わる、つまりデータの一貫性がないのです。

『マックブロス』Vol.8 (技術評論社、1994年12月)32ページ〜

文字の連なりを、視覚的な〈文章〉の一部というだけでなく、電子化された〈テキスト〉としても意識すべき時代に入っている。「毎日ことば・ブログ」は「紙面の見た目さえよければ、という時代から移り変わって、新たな悩みが出てきたというところ」という。1994年の前述インタビューでHartwell氏が、スクリプトの開発段階で「印刷関係者は、まったくお金を出そうとしなかった」一方、「印刷が目的の人々でなくカタログデータベースを作ろうとしている人は本当に真摯な興味があ」ったと言うのは、まさに「見た目さえよければ」済む人々と、データの一貫性を求める人々の温度差だったのだろう。

新聞社・通信社のように記事データベースとしてアーカイブされるものを扱う現場でなくとも、他人様に読んでもらうことを多少なりとも期待して書き連ねたものをウェブサイトに置くのなら、検索エンジンやブラウザの検索機能という比較的新しい〈眼〉をいくらかでも意識しないわけにはいかない。どういう意識で書かれたものであれ、私たちがアップロード・ポストした文章もインターネットという巨大なデータベースの一部をなす。旧来の校正の本にも紛れやすい文字の弁別について説くものはあるが、こうした弁別の必要性には新たな意義・必要性が加わっている。場面によっては新しい対処法、新しい考え方も必要とされるだろう。

自転車の歩道通行は段階的に廃止し、最終的には小学校低学年程度の児童の乗る自転車(運転者の年齢でなく自転車の車輪の径などを基準にする)に限るべきだと私は考えている。実現するまでの間、歩道上の「普通自転車通行指定部分」を示す道路標示「普通自転車の歩道通行部分(114の2)」を現行の下図左のような形式から下図右のように改めたい。自転車が通る部分でなく、通れない部分を「自転車通行禁止」の記号で示し、歩道の建物側(縁石線の反対側)を自転車が通ることは違反行為であることを明示するのだ。併せて道路標示「普通自転車歩道通行可(114の2)」(写真)は廃止する。それには「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(標識標示令)」の改正が必要になる。

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調布市の自転車利用共通ルール(案)に対するパブリック・コメント実施結果(PDF)によると、警視庁は「車道左側端に自転車マークを標示すると、道路交通法上、車道左側端を走行する義務のない自転車(13歳以下の児童など)まで車道左側端に誘導してしまう」と考えているらしい(警視庁が設置を進める法定外表示「自転車ナビマーク」が標識標示令に見られる左向きの自転車を示す記号からかけ離れ、分かりにくいイラストになっているのは、こういった問題意識によるものだろう)。であるならば、歩道に自転車の記号をペイントすることは、自転車を歩道に誘導してしまう効果が考えられる。道路標示「普通自転車歩道通行可(114の2)」に至っては、歩道を道路交通法にいう自転車道と誤認させるおそれすらある。

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みなとみらいの「みらい」は所詮1970〜80年代の未来なので、実に「らしい」と思う。70年代といえば言うまでもなく自転車を歩道に上げた時代で、80年代もその延長線上にある。そもそも自転車の可能性を見据えていたら、みなとみらい大通りはあんな構造になんかなるまい。実のところ、今まで「普通自転車の歩道通行部分」がなかったことが意外にすら思えた。

読売記事が触れている「「国際橋」の歩道で、試験的に自転車専用通行帯を設け、交通規制を実施してきた」というのは記者がよく理解していない類いで、国際橋付近では曲がりなりにも自転車レーンを車道に設けている(使いやすい自転車レーンとは言い難いものだが)。70年代の横浜と川崎には、自転車道や自転車レーンを造った事例がそれなりにあるが、「自転車通行環境整備のモデル地区98箇所」や国際橋と同様、自動車の邪魔にならないところに造った、というにおいがする。「98箇所」の中でも神奈川県警管内の新川崎の事例は酷い代物で、恐らく史上最悪の自転車レーンといえる

神奈川県警には、自転車通行空間関連施策ばかりでなく、警邏用自転車の実態にも問題点がある。警視庁管内では、特に2011年に警察庁交通局長通達「良好な自転車交通秩序の実現に向けた街頭活動等の推進について」が出たのと前後して、車道通行する警邏用自転車を見掛けることが増えた。神奈川県警管内のものはいつも歩道を通り、ただの1例も見たことがなく、目撃証言を募集したいレベルだ。

3 自転車利用者対策

(1) 自転車の危険な運転を防止するための講習に関する規定の整備

自転車の運転者の行う危険な運転に対して、警察庁が道路交通法(以下「法」)を改正してまで対処しようという点は大いに評価すべきことだと思います。

しかしながら具体的な説明あるいは再検討を必要とする事項が数点あります。

○「自転車の危険な運転を防止するための講習」に関わる事項

対処の内容が「自転車の危険な運転を防止するための講習を受けることを命ずる」ことである点に懸念を覚えます。試案では既存の罰則との関係が明らかにされていません。「一定の行為」の「反復」をどう認定するのかについても説明されていません。また講習の内容についても一切明らかでありません。この新たな措置を実効性あらしめるに当たって、有効な講習内容を確立することが最も必要ではないかと考えます。まず、全国の警察官を対象に講習を試行されることを希望します。以前に比べ改善の兆しがあるとはいえ、歩道走行や停止線無視、はなはだしきに至っては車道右側通行を行う例があるなど、警ら用自転車の無秩序な運行が散見されます。警察官を対象に講習を試行・実施することは、警ら用自転車運行の整序化、交通方法を指導するに当たって必要となる知識などの向上・均質化、講習内容自体の向上に資する有力な方途となると考えます。

○「交通に危険を及ぼす一定の行為」に関わる事項

「交通に危険を及ぼす一定の行為(信号無視、しゃ断踏切立入等)」の内容を法あるいは道路交通法施行令(以下「令」)において限定的に明示し、公安委員会規則に委任しないよう要望します。試案に盛り込まれているもの以外に、車道右側通行、法第63条の4第2項に定められた通行場所を遵守し徐行または一時停止する義務の不履行、一時停止の無視、飲酒運転、無燈火運転を加えることを要望します。

特に、自転車の車道右側通行に対しては、信号無視やしゃ断踏切立入よりも優先して取り組むべきであると考えます。自転車の車道右側通行の危険性は、警察を含め社会全体が軽視しているように見受けられ、この状況を深く憂慮しております。警察庁はこれまで自転車交通の整序化をうたっていますが、こと自転車の車道右側通行に関して特筆すべき組織的な対応がみられません。講習受講命令の採否にかかわらず、対応の強化を強くお願いいたします。

このほか、講習受講命令の位置付けいかんによっては「交通に危険を及ぼす一定の行為」に、歩道と車道をみだりに行き来しながら自転車を進行させる行為、歩車道の境界上での一時停止・後方等確認不履行を追加することも検討に値します。具体的な処分は難しいとしても、何らかの注意喚起をするようお願いいたします。

○「信号無視」に関わる事項

自転車の信号無視に関する取締り等を強化するのであれば、車道を通行する自転車が従うべき信号を一般車両用の3燈式信号機とし、「歩行者自転車専用」信号機を廃止することにより、信号交差点における自転車の通行方法を明確化するよう要望します。

交通の方法に関する教則(国家公安委員会告示第3号)第1章第2節 1 (3)には「人の形の記号のある信号は、歩行者と横断歩道を進行する普通自転車(第3章第1節3の普通自転車をいいます。)に対するものですが、その他の自転車もその信号機に「歩行者・自転車専用」と表示されている(付表2(1))場合は、その信号機の信号に従わなければなりません。」 とあります。

『週刊プレイボーイ』2011年7月18日号「短期集中連載〝自転車交通クライシス〟がそこまできている!!」〈前編「自転車無視の交通行政のツケ」〉では、警察庁交通企画課は取材班の問合せに対し「クルマ用の信号と歩行者自転車専用の信号の表示が異なる場合、自転車が守らなければならないのは歩行者自転車専用の信号です。これは車道を走る自転車も同じです」と回答した旨、報じられています。

以上から、国家公安委員会・警察庁としては、車道を通行している自転車であっても、「歩行者自転車専用」信号機の設置された交差点においては、当該信号機に従うべきであると解釈しているものと理解しております。

しかしながらこの解釈に従うならば、「歩行者自転車専用」信号機は車道上の自転車からは視認しづらいにもかかわらず、進行中信号交差点に近づくたびに、この標示板の有無を確認しなくてはなりません。また視認しづらい信号に従う義務を課すことに合理性があるのか、交通の安全と円滑に資するのか、はなはだ疑問です。車道を通行する自転車は「歩行者自転車専用」信号機に「対面」していないため、これに従う必要はないとする令第2条第1項の解釈が広く流布しており、実際に車道を通行する自転車の運転者が車両用の3燈式信号機により通行する例を多く見掛けます。国家公安委員会・警察庁の解釈は、実態から乖離しているということもできます。かかる現状を放置したまま「信号無視」に対する実質的な取締り強化を行うことに関しては賛成できません。

つきましては、令第2条第4項の廃止と、「特定の交通に対する信号機の標示板」のうち「歩行者・自転車専用」と表示されたものの速やかな撤去を強く要望します。

(3) 自転車の通行方法に関する規定整備

「軽車両の路側帯通行を、道路の左側部分に設けられた路側帯に限ること」に関しては賛成します。しかし路側帯が本来歩行者の通行の用に供するために設置されることから、今般の改正を時限的なものとし、将来的に軽車両の路側帯通行を禁止することも考慮に値すると考えます。

併せて、車道外側線の民地側の帯状の部分と道路構造令にいう停車帯等、路側帯と混同されやすいものについても位置付けを明確にし、自転車を含む軽車両が道路右側のものを通行できないことを周知するようお願いいたします。

従来、路側帯における軽車両の進行方向に制限がなかったのは、法第17条第4項と第18条第1項の適用を受けないことによるとされていますが、最も基本的な車両といえる軽車両の通行方法に関する事項を理解するのに法学的素養が要求されるのは好ましくなく、極力簡明な規定とし、分かりやすい周知活動をするよう求めます。

今般の改正の理由として、路側帯における双方向通行に「自転車同士の正面衝突・すれ違い時の接触事故等を引き起こす危険性」があるとしています。

『JAFMate』2013年3月号「事故ファイル」の文中にある茨城県警察本部交通企画課・櫻井哲朗総括理事官による

「右折時は、対向車や対向バイクとの衝突、いわゆる『右直事故』が多いのですが、実は今回のような右折先での横断自転車や歩行者との衝突も少なくありません。特に今回と同様の同方向に進む自転車との衝突事故の件数は、対向からの自転車との衝突に比べて多いことはもちろん、左折時の同方向の自転車との衝突事故の5倍以上となっています」

という談話からも明らかなように、道路の右側を通行をする自転車は、自動車等の運転者から視認されにくく事故を招きやすいことが指摘されています。こういった観点から軽車両・自転車が道路の右側を通行することを抑制することがたいへん重要です。

軽車両が通行することのできる路側帯を道路左側のものに限定することが可能であれば、普通自転車が通行する歩道を道路左側のものだけに限定することもできるはずであり、法第16条第4項を改廃すれば自転車道についても同様であると考えます。歩道と自転車道における自転車の進行方法の指定については、すでに「自転車一方通行」の交通規制がありますが、すべての歩道・自転車道・路側帯および自転車横断帯について軽車両、自転車又は普通自転車が通行できるものを道路左側に設置されたものに限る旨、法を改正することを真剣に検討すべきではないでしょうか。

以上

【註】一部表現を改めた。

このブログそのものは2013年2月26日に公開しましたが、それ以前に書いた文章も気が向いたらここに掲載することにします。その際「公開日」は、このブログへの掲載日ではなく、それぞれの完成日・初出日に設定します。

@_takataka さんの「道路交通法改正試案」に対する パブリックコメントを拝見して、素晴らしい問題意識だと思う。ここでは「自転車道の整備等に関する法律(自転車道整備法)」について考えてみたい。

自転車道整備法は、 警察庁所管の法律ではない。だから警察庁交通局交通企画課法令係に改正を求めても「国土交通省にお伝えします」となれば恐らく上出来で、無視される可能性もある。とはいえ、この法律の第2条第3項第2号は少なくとも今となっては確かに邪魔でしかない。今回の「道路交通法改正試案」に対するパブリックコメントでどうこうできるわけではないだろうが、警察庁の担当者にこのような問題があるということを伝える意義はあるだろう。

自転車道整備法による自転車道の定義に、@_takataka さんがあらためて問題を感じたきっかけは、「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例案」 が自転車道の定義として持ち出してきたことだ。自転車や道路交通に関連する法令に関心のある人たちの間で「自転車道」という言葉は、通常道路構造令道路交通法に定められたものと理解されている。人によっては、大規模自転車道やそれに類似した道を思い出すかもしれない。けれども自転車歩行者道あるいは普通自転車通行可の歩道(以下、両者を「自歩道」と総称する)を含めることは一般的ではない。自歩道は道路交通法上、あくまでも「歩道」に過ぎないからだ。しかし自転車道整備法の定義では、第2条第3項第2号の「自転車及び歩行者の共通の通行の用に供することを目的とする道路又は道路の部分」が含まれる。結果、自歩道のようなものもこの法律の定義がある限り「自転車道」であると強弁できるのだ。

このような自転車道の定義・認識のズレが現れた例は過去にもある。『BiCYCLE CLUB』2007年6月号に載った「国政の場に「バイクラ」登場!/参議院でも取り上げられたシェア・ザ・ロード」 という疋田智さんの記事が触れている。この年の4月10日に開かれた参議院内閣委員会 で、木俣佳丈議員(以下、肩書はいずれも当時)が、2010年までに自転車道を3万キロ整備するという政府の目標について整備実績が「2356キロ」であることを指摘し、残りの期間で達成できるのかと質した。これに対して、笠井俊彦内閣参事官は「2005年にはここで言っている自転車道というのは2万1000キロメートルまでは整備ができている」と答え、「ちょっと定義の違いがあるんじゃないかと思いますが」と付け加えている。このあと国土交通省の原田保夫道路局次長が内閣参事官の答弁は自歩道を含むものだろうと補足している。環境官僚である参事官も「わかっていない」と疋田さんは言う。答弁に立った参事官本人がどうかはともかく、この数字をまとめた官僚はふだん顧みられることのない自転車道整備法の定義をよく分かった上で引っ張り出してきたに違いない、と私はつい邪推してしまう。

自転車道整備法が審議・制定されたのは1969年から翌1970年にかけてのことで、自転車道路の法制化・設置を求める運動が背景にあった。歩道に自転車を通すということは、この法律以前に実際にあったようだが、それは法律に基づくものではない。当時、道路交通法にも道路法・道路構造令にも自転車の通行路・歩道通行についての規定はまだなかった。 自転車道整備法は一連の法整備の地ならしをしたと言えるだろう。この法律が設置を求める自転車道は、4種類に分けられるが、自動車交通から自転車を物理的・構造的に分離しようというものであることが共通する。結果的に、自転車道整備法なかんずく第2条第3項第2号が、自転車を自動車交通(車道)から分離し、歩行者と混在させるというその後の自転車交通政策の基調を確立する先鞭をつけたという言い方もできる。思うに〝交通戦争〟ともいわれたほど交通事故が多かった時代にあって、これは自転車道路運動の妥協だった。その後40年以上にわたって手を付けることができず、自転車は「歩道を走る」ものという間違った認識が定着し、自転車が歩行者を巻き込む事故が社会問題になった。今になって考えると、これは大きな禍根を残すこととなってしまった。

自転車道整備法の成果として、「大規模自転車道」を代表とするサイクリング道路の整備を挙げることができる。スポーツ自転車に慣れる場として一定の役割を果たしている。一方で目玉となった「太平洋岸自転車道」は今に至るも完成せず、その他の路線も多くが未整備区間を残している。加えて自転車道という響きのイメージに反して、ほとんどが自転車専用道路ではない。恵まれたものであっても「自転車歩行者専用道路」であり歩行者と共用する形になっている。東京近郊でサイクリングロードとして認識され人気のある多摩川沿いと東京都内の荒川沿いの道は、いずれも大規模自転車道でないばかりか、位置付けが非常に曖昧だ。日本に自転車道が現れて間もない時期から、例えば『サイクルスポーツ』1972年8月号では、こういった既存の「自転車道路」は何のつながりもなく孤立し「子供の遊び場のよう」で、真の自転車道路とはいえず、一般道に併設され通常の交通手段として常用される自転車の通り道のネットワークが必要だ、と指摘されている。この指摘は現状にも当てはまる。

自転車道整備法は、自転車道整備事業に配慮しなければならない、自転車道整備事業を実施するよう努めなければならない、自転車専用道路等を設置するよう努めなければならない、と、国や地方公共団体の「責務」を謳っているが、これらは努力義務にとどまる。財政的な裏付けがあるわけでなく、自転車道を設置しなければいけない条件や構造的な規格を定めるわけでもない。いってみればこの法律は〝理念法〟に過ぎない。かといって、国と地方の財政事情は厳しく、大掛かりな自転車道の整備に今から財源を付けるという選択肢はないだろう。自転車道は費用が高くつき、歩道すら十分でなかった状況にあって、日本で整備されるのは歩行者と歩道を共用する自歩道ばかりとなってしまった。

施行から42年が経過し、現在も有効な法律であるにもかかわらず、本来の自転車道を造るという目的は実現されたとは言えない。そうしている間に、道路構造令・道路交通法にいう自転車道にかわって、自転車専用通行帯(自転車レーン)が注目されるようになった。けれども自転車レーンは現在の自転車道整備法のいう「自転車道」の範疇から外れる。その上この法律には何の裏付けもないから、自転車レーン整備の役には立ちそうにない。自転車レーンに限らず、自転車の本来の通行空間である車道のもろもろを、自転車に優しい形にしていかなければならないが、こういったことになると完全にこの法律とは無関係になる。あっても大して役に立っていないどころか、この法律の定義のせいで「自転車道」という言葉の意味が一つに定まらず混乱を招き、自歩道を「自転車道」であると強弁する根拠になってしまう。いっそのこと自転車道整備法を廃止し、総合的な自転車新法で自転車インフラストラクチャーに関する原則・方針を再構築すべき時期ではないだろうか。

「自転車の安全で適正な利用に関する都の施策及び都民等の取組を総合的に推進するための計画」などの具体的な内容を示すことなく、「都の施策に積極的に協力する」ことを自転車利用者・自転車使用事業者・自転車関係事業者・都民に求めるのは、はなはだ失当です。従って「施策」「教育指針」「点検・整備指針」案を検討する段階で意見を募集するよう強く求めます。

1(4)は「自転車道、駐輪場等の整備が有効かつ適切に実施されるよう、区市町村等と連携して必要な措置を講ずる。」としています。施策又は条例案には以下のような方向で具体的な記述を求めます。

自転車通行空間の整備については、道路交通法にいう「自転車道」や、歩道上に自転車の通行位置を指定する形式のものは新設すべきではありません。自転車専用の通行空間を創出する必要があるのであれば、道路交通法第20条第2項に基づく自転車専用通行帯にすべきです。自転車専用通行帯の設置が困難な道路であるとするならば、その道路に自転車道を設置することはなおさら困難です。自転車と歩行者の事故が社会問題になっている以上、歩道に自転車の通行空間を求めるべきではなく、いかなる法的根拠があろうと歩道上の自転車通行空間を「自転車道」と呼ぶのはやめるべきです。関係方面と連携して自転車を歩道に誘導しようとする施策・施設を期限を定めて転換する必要があります。「自転車ナビマーク」などは、こうした方向に沿って設置すべきです。自転車専用の通行空間を整備できる箇所は限られます。バスレーンを拡充しバスや二輪車と自転車が通行空間を共有することは有力な方策です。また道路一般において自転車が通行することを前提に道路施設や交通規制(特に交差点の設計・信号機の運用など)を見直す必要があります(最近の都区部における自転車横断帯の撤去はこうした意味から特に評価すべき動向と言えます)。

駐輪場については、住宅地近傍の駅周辺にばかり駐輪場を設置する従来の施策を改め、駐輪施設を一定の面積ごとに設置するよう転換することを求めます。電磁ロック式、あるいは固定器具のみの簡易施設でもよく、可能な限り一時利用が可能な形態にすべきです。特に都区部の駐輪場の分布には偏在が見られます。端末交通としての自転車ばかりでなく、ドアトゥドアに近い自転車の利用があることを考えると、3(2)・3(3)の実効性を確保するためにも必要な措置であると考えます。都・区市町村の設置した施設に附帯する駐輪場については、可能な限り施設利用者以外の駐輪を排除しないこと、そのために必要であれば有料化することも考慮に値します。また民間企業など地方公共団体以外の主体が多様な形態の駐輪施設を運営し営業することを、具体的に何らかのインセンティブを附与するなどして奨励促進すべきです。

5(4)「自転車小売業者は、ブレーキを備えていない自転車等、その利用が道路交通法等に違反するものを販売してはならない。(違反事業者の勧告・公表あり)」に関しては、複数の部品の組み合わせと完成車との境目が曖昧なスポーツ自転車の商品としての性質を考えると不適当です。

もとよりブレーキを備えていない自転車の横行は許容できませんが、第一に一般道路を走るブレーキを備えていない自転車は必ずしも流通段階からブレーキ未装備であったとは限らないこと、第二に元々競輪・競技用のものであったならば一般の自転車小売業者とは異なる経路で出回っていることが容易に想定されることから、流通段階で規制を加えても実効性に疑問があります。現にブレーキを備えていない自転車の問題は、道路交通法に基づく警察の取り締まりや報道などによる周知が一定の効果を上げ、沈静化に向かっていると認識しております。前照燈などについても同様に対処すべきです。5(3)「自転車小売業者は、安全性に関する基準を満たす自転車の販売に努める。」について具体的に踏み込み、日本工業規格や自転車協会認証など適切な品質基準に適合する自転車の販売を奨励する(あるいは適合しない自転車を販売しないことを求める)ことの方が有益ではないでしょうか。

「自転車の安全で適正な利用を促進するための条例」の主な内容として、自転車の通行空間を確保する上で重要な存在である自動車利用者(クルマのドライバー)に関してなんら言及がない点は瑕疵であるといえ、再検討を要します。

最後に、全体として都市交通における自転車の役割、自転車の利活用という視点があまり感じられず大変残念に感じることを附言します。

【註】第4段落についてはブログ掲載に当たり若干言い回しを改めた。

  1. 北海道道路交通法施行細則
  2. 青森県道路交通規則
  3. 岩手県道路交通法施行細則
  4. 宮城県道路交通規則 (第15編 警 察/第3章 行政警察/第3節 交通)
  5. 秋田県道路交通法施行細則
  6. 山形県道路交通規則
  7. 福島県道路交通規則
  8. 茨城県道路交通法施行細則
  9. 栃木県道路交通法施行細則
  10. 群馬県道路交通法施行細則
  11. 埼玉県道路交通法施行細則 (第12編 警察/第6章 道路交通)
  12. 千葉県道路交通法施行細則 (第13編 警察/第3章 警備/第2節 警ら交通)
  13. 東京都道路交通規則
  14. 神奈川県道路交通法施行細則 (第15編 警察/第6章 交通/第1節 通則)
  15. 新潟県道路交通法施行細則
  16. 富山県道路交通法施行細則
  17. 石川県道路交通法施行細則
  18. 福井県道路交通法施行細則 (第9編 警察/第6章 交通)
  19. 山梨県道路交通法施行細則
  20. 長野県道路交通法施行細則 (第7編 警察・消防/第1章 警察)
  21. 岐阜県道路交通法施行規則
  22. 静岡県道路交通法施行細則(第19編 警察/第3章 交通)
  23. 愛知県道路交通法施行細則 (第14編 警察、消防/第1章 警察)
  24. 三重県道路交通法施行細則
  25. 滋賀県道路交通法施行細則 (第15編 警察/第4章 警備)
  26. 京都府道路交通規則
  27. 大阪府道路交通規則
  28. 兵庫県道路交通法施行細則 (第17編 警察/第8章 交通)
  29. 奈良県道路交通法施行細則
  30. 和歌山県道路交通法施行細則
  31. 鳥取県道路交通法施行細則
  32. 島根県道路交通法施行細則 (第14編 警察/第7章 交通)
  33. 岡山県道路交通法施行細則
  34. 広島県道路交通法施行細則
  35. 山口県道路交通規則 (第15編 警 察/第7章 交通)
  36. 徳島県道路交通法施行細則 (第12編 警察/第5章 交通)
  37. (香川県)道路交通法施行細則
  38. 愛媛県道路交通規則
  39. 高知県道路交通法施行細則
  40. 福岡県道路交通法施行細則 (第15編 警察/第7章 交通)
  41. 佐賀県道路交通法施行細則
  42. 長崎県道路交通法施行細則 (第18編 警察/第5章 交通)
  43. 熊本県道路交通規則 (第14編 警察・消防/第5章 交通)
  44. 大分県道路交通法施行細則 (第13編 警察・消防/第1章 警察/第2節 警察権能/第2款 行政警察/第4項 交通)
  45. 宮崎県道路交通法施行細則
  46. 鹿児島県道路交通法施行細則
  47. 沖縄県道路交通法施行細則

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